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2021年06月04日

ふるさとへの思い、亡き消防団の仲間に捧げる慰霊の花<普賢岳噴火災害30年>

43人が犠牲になった長崎県・雲仙普賢岳の火砕流惨事から今年で30年。当時消防団員として地域を守った喜多 淳一さん(68)は、犠牲になった仲間たちへの慰霊の花を育てています。

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雲仙普賢岳を正面に臨む、島原市・上木場(かみこば)地区です。30年前、新聞やテレビの関係者はこの一帯を「定点」として連日カメラを構え、普賢岳の溶岩ドームを撮影し続けました。

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1991年6月3日の大火砕流で、定点周辺では、チャーターしていたタクシーの運転手も含めるとマスコミ関係者20人が亡くなりました。さらに、少し下流の消防団の詰所付近では、取材中の報道陣に退避を促すため直前まで付近に居た警察官や、土石流の警戒にあたっていた消防団員などが亡くなり、犠牲者はあわせて43人にのぼりました。喜多さんの消防団の仲間たちも、命を落としました。

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マスコミと地元の住民、それぞれが思いを抱える中、火砕流惨事から30年という月日が経ちました。

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2021年1月、地元の安中(あんなか)地区 町内会連絡協議会は、30年間放置されたままになっていた「定点」周辺を、保存整備しようと呼びかけました。

安中地区町内会連絡協議会 阿南 達也 会長:

私たちは、この地をいつまでも後世に伝え継ぐという義務があり、その努力をしていかなければならないと思っています。

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新たにマスコミ関係の車両など3台が掘り起こされ、一帯は「災害遺構」として整備されました。

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定点整備の中心となった 宮本 秀利さん:

30年経つと先輩達がここで亡くなったことさえ知らない。いろんな人たちがいろんな思いを持っていると思うが私達の生活の源である雲仙・普賢岳の有り様をここに来て考えてほしい。

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この日、地元の住民と一緒に「定点整備」の作業をする喜多 淳一さん(68)の姿がありました。喜多さんは30年前、消防団の分団長として上木場で土石流の警戒にあたっていました。

喜多 淳一さん(68):

(マスコミのせいで仲間が亡くなったという思いは)以前は結構、強かったけど、みんながそれぞれ自分の仕事をしながら犠牲になっているんだから、今となっては一緒かな。

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当時は、住民が避難した後も「ふるさとは自分たちが守る」という思いで活動していましたが、あの日、仲間の多くが火砕流で犠牲となりました。

喜多 淳一さん:

拾った命。ちょっとした時間のズレで自分は助かった。

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喜多さんは、被災後まもなく農業を再開し、数年前から花の栽培にも取り組んでいます。水やりの手間を少なくするためのフラワーポットを作り上げ、特許まで取得しました。

喜多 淳一さん:

亡くなった消防団のことが、心の中にずっとあり続けることは事実。彼らの犠牲があったからこそ今まで頑張ってこれたし、彼らが守ろうとした地域・ふるさとを、もう一度元気にしたい。

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当時、消防団員の詰所として使われていた北上木場農業研修所の跡地です。この場所は火砕流災害から11年後に、消防団員の遺族など関係者の慰霊の場として整備されました。喜多さんは、毎年6月3日、犠牲となった仲間に花を手向けてきました。

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喜多さんは5月、かつての同僚に捧げる花を持って普賢岳のふもとにある学校を尋ねました。あの日のことを思いながら、子どもたちに、水やりなど世話をしてもらいます。その花を、今年は「定点」にも飾ることにしました。

マスコミの過熱報道がなければ消防団の犠牲はなかったかもしれない...。30年の時の流れは、心の奥底でくすぶる思いを少しずつ和らげたようです。

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喜多 淳一さん:

やはり(マスコミも)災害に携わって亡くなった方たちですからね。6月3日が風化しないことと。子どもたちにも災害を慰霊するのに関わってほしい。花がひとつのきっかけになれば。

喜多さんの花を通して、犠牲となった仲間の思いと30年前の災害を伝えます。

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