「ステージの5分間だけ戦争を忘れられる」ウクライナに夫を残し2歳の息子と長崎へ...サーカスに立つ女性ダンサー
長崎県大村市で開催されている「ワールド・ドリームサーカス」には、ウクライナ出身の女性が出演しています。戦禍を逃れて日本へ...彼女の演技にかける思いを聞きました。
「ワールド・ドリームサーカス」は、イタリアやコロンビアなど世界のトップパフォーマーによる、肉体の限界を超えたアクロバティックな演技が観客を魅了します。
ひときわ歓声があがるのは、鉄格子の球体の中をバイクが走るスタントショーです。
観客:
楽しかったです。
観客:
おもしろかったね。また来たいなと思いました。
ダンサーを務めるイリナ・ボロンケビッチさん(30)はウクライナの出身です。
イリナさんは2歳の息子、マキシムくんと共に日本全国をまわっています。
イリナ・ボロンケビッチさん:
大村はとても美しく落ち着いている。子供と普通の生活ができている。ウクライナでのことを心配せずにいられる。
出演者やスタッフ、約30人のうち2人がウクライナの出身です。
夫を心配し朝晩にニュースを確認
公演は多い日で1日に3回行われ、イリナさんは午前の公演のあと一旦、宿舎に戻って、マキシムくんを寝かしつけてから午後の公演に出かけます。
宿舎の壁にはウクライナにいる夫の写真が飾られています。
夫のヴァシィルさんは、今もウクライナ西部のテルノーピリで銀行員として働いていてます。
夫のことが心配で、朝起きた時と寝る前にはウクライナのニュースをチェックする日々です。
イリナ・ボロンケビッチさん:
自分と他のウクライナ人は春まで待つしかないので毎日ストレスを受けています。ロシア軍は前進と後退を繰り返しており、何が起こっているのか私たちには分からない。私は家族と夫のことを思って悲しんでいます
サーカスの会場近くのショッピングモールで、PRのため演技を披露することもあります。
大村市では、地元の人との交流もあると言います。
イリナ・ボロンケビッチさん:
公園のまわりで遊ぶとき、大村市民はやさしい。子供が話しかけてくれて、どこから来たかと聞かれて"ウクライナ"と答えると、戦争のことを知っていて、応援してくれる
一心に演技に打ち込む理由は
両親や夫の安否を気遣う日々ですが、演技中だけは母国で続く戦争のことを忘れられるそうです。
イリナ・ボロンケビッチさん: ダンスをしている5分間だけは戦争のことを忘れられる。ただダンスを観客のために披露しているから
息子のために、母国にいる夫や両親のために。サーカスの仲間やパフォーマンスを喜んでくれる観客にも支えられながら、イリナさんは全力でステージに立ちます。