第596回番組審議会 2025年4月9日
第596回番組審議会は、2025年4月9日にテレビ長崎本社で開催され、下記の番組について審議を行った。
審議議題番組 『広島・長崎 被爆80年プロジェクト「つたえる つなげる ヒロシマ・ナガサキ」』
(「KTN Live News イット!」内の特集など計4回分)
出席委員(順不同・敬称略)
田崎 智博
内田 輝美
近久 宏志
吉井 剛
藤岡良規
河村 有教
北村 由香
樋口 聡子
以上 8名
欠席委員(順不同・敬称略)
なし
審議の概要
- 若い世代にも見てもらわないといけないという意味で、今をときめく若手俳優の方を当てるのは効果的。水上さんの被爆者に対する反応、感想がとても素直で、きのこ雲の話については「こんなの見たことがない、こんなものが世界に存在していたのかというくらいショッキング」という、少し幼い、拙い表現もあったが、それこそが若い世代らしい感じ方で、シンパシーも得やすいと感じた。
- 人選が秀逸。水上さんも上白石さんもすごく一所懸命に被爆者の話に耳を傾けていることが、映像から伝わってくる。言葉の選び方も丁寧で、「光栄なお役目です」、「お手伝いをさせていただきます」、「私も勉強させていただきます」。新聞やテレビの記者と違って、人と話して何かを引き出すという訓練を受けているわけではないので、それはでこぼこもあったが、対人能力がとても高いと思った。原爆、平和、聞いたばかりの話に対する感想を自分の言葉で一所懸命に話そうという姿勢が伝わってくるのがとてもよかった。
- 有名俳優を起用して被爆80年の機運を高めていくことは、長崎のローカル局ならではの取り組みで、広島の放送局とのアライアンスも意味がある。
- 上白石さんは、切明さんの歌集を事前に読んでその感想を伝え、切明さんが感動したことがあるという芝居に、自分も出たことがあると話すなど、実体験を生かし、うまく対話ができていた。被爆者のどんな思いを伝えるべきか、若い世代にはどんな方法があるかまで考えさせるメッセージを打ち出したように感じ、メッセージの質が違うと感じた。
- インタビュアーとしての水上さんは、今を生きる普通の若者がリアルな体験談を初めて聞いて、驚きで声が出ないといった雰囲気が非常によく出ていて、引き込まれた。台本ではなく、自分の気持ちを自分の言葉で話していた姿に、非常に好感が持てた。
- 上白石さんはさすがのインタビュアーぶりだった。前かがみで(被爆者に)寄り添いながら共感していくところが、気持ちから自然ににじみ出ていた。彼女が涙を流すところでは、こみ上げる感じがあった。普段はあまり被爆者のことを考えない若い世代に向けた水上さんや上白石さんの起用だと思うが、若者だけでなく、自分のような上の世代にも刺さった。
- 水上さんが、原爆を落とされたことに対して、三瀬さんが怒りの感情を見せず後世に伝えていこうとしているような姿勢が見受けられたと言っていて、素朴でいい疑問だと思ったが、答えがなく次の質問に移ってしまった。「なぜ怒りを見せないのか」を引き出してほしかった。
- 被爆者個人の経験が語られ、歴史的な出来事ではなく、個人の感情や記録として、ありのままを伝えているところがよかった。見せ方の工夫はいろいろできるが、最も重要なのは被爆者の声を、感じたまま、ありのまま伝えていくこと。これをいかに届けるかが大事。
- 字幕が多く、被爆者の言葉は、ほとんど字幕に起こしてあった。この言葉が大事で、残していきたいという意志が感じられた。今後は質問も字幕にしてほしい。
- テレビで被爆証言をただ流す、語ってもらうのは難しいので、聞き手に俳優さんを起用するのは、テレビならではの企画でよい。
- 平和の象徴であるハトの手形もいいプロジェクトだった。映像をアーカイブとして保存し、後世の、特に若年層に伝えるための資産として、KTNで保存してほしい。
- 広島の放送回は、当時の絵がたくさん出てきた。写真ではなく絵が出てきて、ドラマ仕立てまではいかないが、絵を見せられることでイメージがしやすかった。
- 被爆者の築城(ついき)さんの名前は、なかなか読めない。切明(きりあけ)さんも珍しい苗字、三瀬(みせ)さんも(みつせ)さんとまちがいやすい。名前のルビはあった方がいい。
- 番組の外でも告知するべき。ホームページなどで簡単に過去回を見られるとよい。ニュース枠の中では時間の制約もあると思うので、ディレクターズカットなど、少し長めの映像が見られると、とてもいい発信になると思う。